
足立区北綾瀬の眼科、シオノアイクリニックです。
「最近、親の物忘れがひどくなった」「外出を嫌がるようになった」……。その原因は、脳そのものだけでなく**「目」**にあるかもしれません。
近年の医学研究により、白内障手術を受けることで認知症の発症リスクが大幅に低下するという衝撃的なエビデンスが次々と発表されています。
今回は、その科学的根拠とメカニズムを詳しく解説します。1. 2021年の衝撃的データ:発症リスクが約30%減少最も注目すべきエビデンスの一つが、2021年にアメリカのワシントン大学が発表した大規模な追跡調査です(JAMA Internal Medicine 誌掲載)。
研究の概要:65歳以上の白内障患者約3,000人を30年間にわたって追跡調査。結果:白内障手術を受けた人は、受けていない人に比べて、アルツハイマー型認知症を含む認知症の発症リスクが約30%(正確には27%)低いことが判明しました。興味深いのは、同じ目の病気でも**「緑内障」の手術ではこのリスク低下が見られなかった**という点です。
つまり、白内障特有の「視覚の回復」が脳に特別な影響を与えていることを示唆しています。
2. なぜ「目」を治すと「脳」が若返るのか?なぜ白内障の手術が認知症予防に繋がるのでしょうか。科学的には主に2つのメカニズムが考えられています。
① 視覚刺激による「脳への栄養」脳に届く情報の約80%は視覚に依存しています。白内障によって視界が曇ると、脳へのインプットが激減します。
{視覚情報の欠如}→ {脳の神経回路の萎縮} →{認知機能の低下}→手術によってクリアな光が再び網膜に届くようになると、脳の神経細胞が活性化され、認知機能の維持・改善に寄与しているのかもしれません。
② 「社会的孤立」というリスク因子の解消認知症の最大の敵は「孤独」と「活動性の低下」です。見えにくい = 転倒が怖い、読書や手芸が疲れる、人の顔が判別できない。結果 = 外出を控え、会話が減り、趣味を諦める。白内障手術は、単に視力を戻すだけでなく、「社会とのつながり」を取り戻すスイッチになるのです。
3. 「青色光(ブルーライト)」と睡眠の質最新の研究では、**「睡眠」**との関係も指摘されています。白内障が進むと、水晶体が黄色く濁り、脳の体内時計を調節する「青色光(ブルーライト)」が通りにくくなります。これによりメラトニンの分泌が乱れ、睡眠の質が低下。睡眠不足は脳内の老廃物(アミロイドβ)の排出を妨げるため、認知症リスクを高める要因となります。手術でレンズが透明になれば、体内時計がリセットされ、脳の健康が守られやすくなっているのかもしれません。
明確なメカニズムはまだ不明なところはあるものの、確かに手術によって見えるようになった方の中で、術後見違えるように活動的になる方をよく見かけます。
目は「脳の出先機関」であるかつて白内障手術は「不自由を感じたら受けるもの」でした。しかし、最新の科学は**「脳の健康を守るために受けるもの」**という新しい視点を提示しています。「本人が見えにくくて困ってから受けるもの」と私も考えていましたが、あまり先延ばしにするのも良くないのかもしれませんね。




