足立区北綾瀬の眼科、シオノアイクリニックです。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。
このとき、患者さん一人ひとりに合わせて眼内レンズの度数を決めます。
実は、この度数選びは手術後の生活に大きく関係します。
「遠くが見えるようにしたい」
「スマートフォンを裸眼で見たい」
「パソコンをするときに眼鏡をかけたくない」
こうした希望によって、適した眼内レンズの度数は変わってきます。
今回は、眼内レンズの度数をどのように決めるのか、そして実際にどのような方にどのくらいの度数がおすすめなのかを解説します。
1.眼内レンズの度数はどうやって決める?
眼内レンズの度数を決めるためには、まず目の長さや角膜の形状などを測定します。
主に重要になるのは次の3つです。
① 眼軸長
眼軸長とは、角膜から網膜までの目の奥行きの長さです。
一般的に、眼軸長が長い目は近視、短い目は遠視になりやすい傾向があります。
強度近視の方は眼軸長が長く、遠視の方は眼軸長が短いことが多いです。
② 角膜の屈折力
角膜は目の中で大きな屈折力を持つ部分です。
角膜のカーブが強いのか、弱いのかによって、必要となる眼内レンズの度数が変わります。
また、角膜に乱視がある場合には、その量や方向も確認します。
③ 前房深度などの眼内構造
角膜から水晶体までの距離なども測定します。
これらの情報から、手術後に眼内レンズが目の中のどの位置に収まるかを予測します。
2.眼内レンズの度数は計算式で決めている
測定した眼軸長や角膜の屈折力などをもとに、眼内レンズの度数を計算します。
代表的な計算式には、
- Barrett Universal II
- Kane
- Haigis
- SRK/T
- Hoffer Q
などがあります。
最近では、人工知能や機械学習の技術を取り入れた計算式も登場しています。
ただし、どの計算式を使用しても、術後の度数を完全に予測できるわけではありません。
眼内レンズが手術後に収まる位置などによって、多少の誤差が生じることがあります。
特に強度近視や強度遠視、過去にレーシックなどの角膜屈折矯正手術を受けた方では、度数計算が難しくなる場合があります。
3.目標度数によって見える距離が変わる
ここが今回の大切なポイントです。
白内障手術では、眼内レンズの度数を調整することで、術後にピントが合いやすい距離をある程度選ぶことができます。
例えば、目標度数を0Dに設定すると、遠くにピントが合いやすくなります。
一方、−2.0Dに設定すると、約50cmの距離が見やすくなります。
目標度数とピントが合いやすい距離の目安は次のとおりです。
| 目標度数 | ピントが合いやすい距離 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 0D | 遠方 | 運転、テレビ、外出 |
| −0.5D | 約2m | 遠方から中間距離 |
| −1.0D | 約1m | パソコン、室内 |
| −1.5D | 約67cm | デスクワーク |
| −2.0D | 約50cm | パソコン、スマホ |
| −2.5D | 約40cm | 読書、スマホ |
| −3.0D | 約33cm | 手元の細かい作業 |
※距離は理論上の目安です。実際の見え方は眼内レンズの種類、瞳孔径、残余乱視などによって異なります。
では、実際にはどのくらいの度数に合わせるのがよいのでしょうか?
4.こんな人にはこの度数がおすすめ!
ここからは、具体的な生活スタイル別に考えてみましょう。ただし、これは一般的な度数の決め方で、例外もあります。
① 車の運転や外出が多い人、元々遠視眼であった方
おすすめの目標度数:0D〜−0.5D
車の運転をする方や、外出する機会が多い方は、遠くが裸眼で見えることが大切です。
そのため、基本的には0D付近を目標にすることが多いです。
遠くが見やすくなる一方で、近くを見るときには老眼鏡が必要になります。
② パソコンを使うことが多い人
おすすめの目標度数:−0.75D〜−1.5D
仕事でパソコンを長時間使う方には、中間距離を意識した度数設定も選択肢になります。
一般的なパソコンの画面までの距離は50〜70cm程度です。
この距離を裸眼で見やすくしたい場合には、−1.0D〜−1.5D程度が候補になります。
ただし、遠くを見るときには眼鏡が必要になる可能性があります。また、スマホなどは老眼鏡を必要とする場合もあります。
③ スマートフォンをよく使う人
おすすめの目標度数:−1.5D〜−2.5D
スマートフォンを見る距離は、一般的に30〜40cm程度です。
そのため、スマートフォンを裸眼で見たい方には、−2.0D前後が選択肢になります。
ただし、スマートフォンを見る距離には個人差があります。
40cm程度で見ることが多い方と、30cm程度まで近づけて見る方では、適した度数が異なります。
④ 読書や手芸など、近くの作業が多い人
おすすめの目標度数:−2.0D〜−2.5D
読書や手芸など、手元を見る機会が多い方は、近方にピントを合わせる方法があります。
例えば、−2.5Dであれば約40cmがピントの合いやすい距離になります。
ただし、遠くを見るときには眼鏡が必要になります。
近くを裸眼で見たいのか、遠くを裸眼で見たいのか、優先順位を決めることが大切です。
⑤ もともと近視が強かった人
おすすめの目標度数:−1.5D〜−3.0Dも選択肢
実は、もともと近視が強かった方は、手術後もある程度近視を残す方法が向いている場合があります。
長年近視だった方は、眼鏡を外すと近くが見える生活に慣れていることがあります。
そのため、手術で完全に遠くが見えるようにすると、今まで裸眼で見えていたスマートフォンや読書が見づらくなってしまうことがあります。
こうした方には、あえて近視を残す度数設定も選択肢になります。
5.左右の目で違う度数にする方法もある
実は、左右の目で目標度数を変える方法もあります。
これをモノビジョンといいます。
例えば、
- 右目:0D(遠方)
- 左目:−1.5D(中間距離)
というように設定します。
こうすることで、片目は遠く、もう片方の目は少し近くを見る役割を持たせます。
左右の目で異なる距離にピントを合わせることで、眼鏡への依存を減らせる可能性があります。
ただし、左右の見え方が異なるため、遠近感や立体視に影響する場合があります。
また、左右の度数差が大きいほど違和感が出ることもあります。
そのため、実際に行う場合には、患者さんの適性を考慮する必要があります。基本的には元々左右差があった方が適応です。
6.左右の目を同じ度数にする方がいい?
基本的には、左右とも遠方に合わせる方法が一般的です。
左右とも0D付近に設定すれば、両眼で遠くを見るときにバランスが取りやすくなります。
一方、左右とも−2.0Dに設定すれば、近くを裸眼で見やすくなりますが、遠くを見るには眼鏡が必要になります。
また、片目ずつ手術をする場合には、もう片方の目の度数も重要です。
例えば、片目だけ手術をして0Dに合わせた場合、反対の目が強い近視のままだと、左右の度数差が大きくなって違和感が出ることがあります。
そのため、両眼の手術を予定している場合には、左右のバランスも考えながら度数を決める必要があります。
7.眼内レンズの度数は100%予定どおりになる?
残念ながら、どれだけ精密に計算しても、術後の度数を完全に一致させることはできません。
一般的には、術後の屈折誤差が±0.5D以内に収まることを一つの目安としています。
ただし、眼軸長や角膜の状態、手術歴などによって予測精度は変わります。
また、眼内レンズの度数が予定どおりでも、乱視が残っていると裸眼視力が十分に出ないことがあります。
そのため、眼内レンズの度数だけでなく、乱視の評価や矯正も重要になります。
8.まとめ:大切なのは自分の生活に合った度数を選ぶこと
白内障手術では、眼内レンズの種類だけでなく、度数の選び方も非常に重要です。
遠くを裸眼で見たい方、パソコンを裸眼で使いたい方、スマートフォンや読書を裸眼でしたい方では、適した度数が異なります。
今回ご紹介した度数はあくまで目安ですが、次のように考えると分かりやすいと思います。
- 遠くを重視する方:0D付近
- パソコンを重視する方:−1.0D前後
- スマートフォンを重視する方:−2.0D前後
- 読書や手元の作業を重視する方:−2.0D〜−3.0D
もちろん、実際には目の状態や左右のバランス、使用する眼内レンズの種類なども考慮して決定します。
また、手術が片目だけなのか、両目するのかでも設定度数は変わります。
白内障手術は、単に濁った水晶体を取り除く手術ではありません。
手術後にどのような生活を送りたいのかを考え、それに合わせて度数を決めることが大切です。
患者さんの生活スタイル、考え方は人それぞれなので、個々に合わせてレンズの度数は決めるものです。
当院では、患者さんの生活スタイルやご希望を伺いながら、一人ひとりに合った眼内レンズの度数を検討しています。
度数選びについて分からないことがあれば、ぜひ診察時にご相談ください。




