足立区北綾瀬の眼科、シオノアイクリニックです。
白内障手術の際に、
「できれば遠くも見たいけど、手元もある程度見たい」
「多焦点眼内レンズほど強いハロー・グレアは避けたい」
「できるだけ自然な見え方がいい」
という方に選択肢となるのが、EDOF(焦点深度拡張型)眼内レンズです。
現在、EDOFレンズの代表格としてよく知られているのが、
- TECNIS PureSee(ピュアシー)
- Clareon Vivity(ビビティ)
の2つです。
どちらも「遠く+中間を見やすくする」という基本的な考え方は共通しています。
では、
PureSeeとVivityは、実際にはどちらがいいのでしょうか?
2025~2026年に発表された比較研究も含めて、できるだけ分かりやすく解説します。
そもそもEDOFレンズとは?
一般的な単焦点眼内レンズは、基本的に「遠く」など1つの距離にピントを合わせます。
一方、EDOFレンズは、ピントが合って見える範囲を広げることで、
遠方 → 中間 → 比較的近方
まで連続的に見やすくすることを狙ったレンズです。
ただし、EDOFレンズは「どこでも完全に裸眼で見えるレンズ」というわけではありません。
特に、
40cm程度の細かい文字を裸眼で読む
という近方視については、眼鏡が必要になることがあります。
ここは、3焦点などの多焦点眼内レンズとは大きく異なるところです。
PureSeeとVivityの大きな違い
この2つは同じEDOFに分類されますが、光学設計は同じではありません。
Vivity
Vivityは、非回折型の波面形成技術によって焦点深度を拡張するレンズです。
特徴としては、
「中間視力をしっかり確保する」
ことが大きなポイントです。
パソコン、タブレット、料理、メニュー、車のメーターなど、日常生活で使う距離を比較的得意としています。
PureSee
PureSeeも非回折型のEDOFレンズですが、光学的には単焦点レンズに近い光学プロファイルをベースに、機能的な中間視力を拡張するという考え方のレンズです。
PureSeeの大きな特徴として注目されているのが、
コントラスト感度の良さと、ハロー・グレアなどの光視現象の少なさ
です。
つまり、
「できるだけ自然な見え方を保ちたい」
という方に魅力のあるレンズといえます。
実際の比較データではどうなのか?
ここが一番気になるところだと思います。
2026年には、PureSeeとVivityを直接比較した臨床研究が複数報告されています。
85人を対象に6か月後を比較した研究では、興味深い結果が出ています。
中間視力
Vivityの方が良好でした。
裸眼中間視力は、
Vivity:0.08 logMAR
PureSee:0.22 logMAR
となり、Vivityが有意に良好でした。
つまり、
「パソコンなど中間距離を裸眼でしっかり見たい」
という点では、現時点の比較研究ではVivityに分がありかと思います。
近方視力もVivityがやや優勢
同じ研究では裸眼近方視力についても、
Vivity:0.21 logMAR
PureSee:0.28 logMAR
となり、Vivityの方が良好でした。
ただし、これは「Vivityなら40cmの細かい文字まで完全に裸眼で見える」という意味ではありません。
あくまで、
PureSeeよりVivityの方が近方まで焦点が伸びている
と考えるのが適切かと思います。
一方、PureSeeが優れていたのが「コントラスト」
ここはPureSeeの大きな特徴です。
同じ研究では、明所・暗所の両方でコントラスト感度はPureSeeの方が良好でした。
具体的には、
| PureSee | Vivity | |
|---|---|---|
| 明所コントラスト感度 | 1.57 | 1.45 |
| 暗所コントラスト感度 | 1.30 | 1.19 |
という結果でした。
コントラスト感度は、単純な視力表の「1.0」「1.2」とは少し違います。
例えば、
- 夜間の道路
- 薄暗い場所
- 白い文字とグレーの背景
- 霧や雨の日
- 微妙な濃淡の識別
など、「どれだけ自然に、メリハリのある見え方ができるか」に関係します。
ハロー・グレアは?
これもPureSeeの強みです。
6か月後の比較では、光視現象(dysphotopsia)のスコアが、
PureSee:1.3
Vivity:5.8
と、PureSeeの方が有意に少ない結果でした。
つまり、
「夜間の光のにじみやまぶしさをできるだけ避けたい」
という方には、PureSeeは非常に魅力的な選択肢になります。
ただし、研究によって結果には多少の違いがあります。
別の102眼の比較研究では、Vivityの方が中間視力に優れ、グレア・ハローも少ない傾向が報告されています。
そのため、
現時点では「PureSeeなら絶対にハローが少ない」「Vivityなら絶対に多い」
と単純に決めつけることはできないかと思います。
では、どっちを選べばいい?
ここまでの結果をまとめると、かなり分かりやすくなります。
PureSeeが向いている方
- 見え方の「質」を重視したい
- コントラスト感度を重視したい
- 夜間運転をする
- ハロー・グレアをできるだけ避けたい
- 単焦点レンズに近い自然な見え方を希望する
- 中間視力は欲しいが、近方を完全に裸眼にすることまでは求めない
このような方では、PureSeeは非常に良い選択肢になると思います。
Vivityが向いている方
一方で、
- パソコンをよく使う
- 60~80cmくらいの距離を裸眼で見たい
- 中間視力をできるだけ重視したい
- 手元もある程度裸眼で見たい
- 眼鏡への依存をできるだけ減らしたい
という方では、Vivityが候補になります。
特に、
「遠く+中間をしっかり見たい」
という目的なら、現在の比較研究ではVivityにやや分があるかと思います。
「PureSeeは単焦点に近い」=「中間が弱い」ではない
ここは誤解してほしくないポイントです。
PureSeeは単焦点眼内レンズそのものではありません。
EDOFとして、
単焦点よりも広い焦点域
を持っています。
実際、PureSeeも遠方から中間にかけて良好な視機能が得られています。
眼内レンズ選びで一番大切なのは「レンズの順位」ではありません
「PureSeeとVivity、どちらが一番いいですか?」
と聞かれることがあります。
しかし、眼内レンズは、
全員にとって一番いいレンズがあるわけではありません。
例えば、
「夜に車を運転する人」と
「ほとんど車を運転しない人」
では、重要視するポイントが違います。
また、
「パソコンを長時間使う人」と
「読書を長時間する人」
でも違います。
さらに、
- どのくらい眼鏡をかけてもいいのか
- 夜間運転をするか
- 手元をどの程度裸眼で見たいか
- コントラスト感度をどの程度重視するか
- ハロー・グレアをどの程度許容できるか
によって、適したレンズは変わります。
まとめ
PureSeeとVivityは、どちらも「単焦点より広い焦点域を得ながら、多焦点レンズより光視現象を抑える」という方向性のEDOF眼内レンズです。
今後さらにデータが蓄積されることで、それぞれの違いがより明確になってくると思われます。
「PureSeeとVivity、どちらが自分に合っているのか?」
これは、単純に「人気のレンズ」を選ぶのではなく、普段どの距離を見ることが多いのか、夜間運転をするのか、眼鏡をどこまで許容できるのかを考えて決めることが重要です。
白内障手術では、眼内レンズそのものだけでなく、術前の度数計算や目の状態、乱視の有無なども含めて総合的にレンズを選択していきます。




